歴史上最も多く印刷された肖像のひとつ、この顔。
「英雄的ゲリラ戦士」と賛美されたエルネスト「チェ」ゲバラ。
彼はいったいどんな人だったのだろうか。





あらすじ

これまで、キューバ革命の英雄、チェ・ゲバラを紹介した本は、日本では、60年代から70年代にかけて出版されたものが主流だった。
かつて、本人の著書の中から、キューバやボリビアでの日記などは紹介されたことがあるが、伝記のようなものが注目されたのは、つい最近のことなのだ。
『チェ・ゲバラ 情熱の人生』は、1997年にアルゼンチンで刊行された”Che. Sueno Rebelde”の日本語版である。
現在アルゼンチン、メキシコ、スペイン、ブラジル、ドイツ、イタリア、中国、ギリシアの世界8ヶ国で出版されている。
チェの生まれたアルゼンチンでは、すぐにもベストセラーリストのナンバー2にリストアップされた。
イタリアでは、’98年4月、ノンフィクション部門のベスト4にもなっている。

『チェ・ゲバラ 情熱の人生』は、世界中で知られている代表的な写真はもちろんのこと、貴重な未公開写真も数多く含まれている。

彼のカリスマ性を世界的に知らしめたのは、何よりも彼の肖像、つまり、彼の微笑や交換を持てる風貌に違いない。
特に、キューバの写真家コルダが撮った、乱れ髪で遠くを見すえるチェの有名な写真は、多くのポスター、ステッカーやTシャツになり、大勢の学生運動のシンボルにもなった。
もちろん、この本の表紙にも使われている。

エルネスト・ゲバラの少年期から、非情な<チェ>への変容、キューバやその他の国での活躍、ボリビアの険しい山中の悲劇的な死まで、キューバ革命の英雄の生涯を記録する400枚以上の写真で構成された最も完全なコレクションといえよう。
判型もA4サイズで見応えがある。

チェの著作や関連資料から数多くの引用、さらに作家M.サンチェスの博学的なエッセーも加わり、ベレー帽姿のかっこよさを越えて、チェの思想や彼の歩んできた道が生々しく伝わってくる。

この本の特筆すべき点は、写真と文章の見事な調和であり、伝記本の新しいスタイルを創出したことにある。
完成までの編集者の大きな苦労と情熱が感じられる。
チェを愛する人にとっても、チェのことを知りたい人にとっても、必読の書であろう。

編集者は、現代史の歴史学者フェルナンド・ディエゴ・ガルシアとオスカー・ソラで、作家M.サンチェスとグラフィックデザイナーのF.ソツァーニが参加して制作された。
4人ともアルゼンチン人で、ガルシアとソラはブエノスアイレス大学を経て、ドイツのハイデルベルグ大学やベルリン自由大学で活躍した。
日本でも出版された『エビータ』は彼らの作品で、詩人パウロ・ネルーダ及び政治家サルバドレ・アジェンデの伝記写真集を作成した。

日本語の翻訳者R.ヘロルド氏は在日ドイツ人で、東京大学、ベルリン自由大学(社会学博士)を経てジャーナリストとして活躍、外務省研修所講師も勤める。
この本の出版にあたり、歴史的背景を探るために、1997年の秋、チェ・ゲバラ没後30年を迎えたキューバを訪ねるなど、取材を重ねていた。